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​楢原山信仰についての研究

かつて楢原山は、山岳信仰雨乞い信仰牛馬保護信仰などで栄えていました。

​・山岳信仰

楢原山への信仰は、恵みをもたらす山岳への神聖視に始まります。

“奈良原権現”をいただく楢原山は、“伊予の御嶽”と呼ばれる修験道の山でした。かつて山頂付近にあった寺院は、往時には48人もの行者がいたと伝えられています。

山頂から出土した国宝『奈良原山経塚出土品』に残る痕跡、奈良原神社に祀られた神格、別当である光林寺の状況などから、奈良県吉野の金峯山・和歌山県熊野の熊野三山・北陸地方の白山、それぞれの修験道との関わりが考えられています。

​・雨乞い信仰

楢原山の雨乞いは、参籠型の修験的なものでした。祭司にあたる仏僧や神職が楢原山の頂上・奈良原神社に登り、祈念する方式がとられていたと思われます。

古くは江戸時代の元禄期に、奈良原神社の別当・光林寺の光範上人が行った雨乞いの記録が残されています。当地での雨乞いはその後もたびたび行われ、今治藩主が参詣したとの記録も、多数残っています。

近年でも、2017(平成29)年の愛媛国体に際してこの雨乞いが行われました。この時の効果もすさまじく、ボート競技に使用する玉川ダムの水量が「あっという間に増えるほどの雨が降った」と話題になるほどでした。

​・牛馬保護信仰

“奈良原さん”の名前を県下に広めたのは、なんといっても牛馬保護の信仰でした。

農家の労働力として欠かせなかった牛や馬へのご加護があるとして、江戸時代中期から昭和30年代にかけて、近隣市町村から島嶼部まで「万民耕作家畜繫栄講」などの講組織が作られるほどの賑わいぶりでした。

​しかし、残念ながら自動車や大型農機具の普及にともない牛馬が廃れ、この信仰はすでに過去のものとなっています。

研究論文一覧(当会で把握できたもののみです。他にご存知の方は、ぜひご連絡ください)

◆谷口益男、芥川保雄「奈良原神社信仰 ―特に牛馬保護神として―」『玉川町の研究 奥地の自然と人文について』今治明徳学園、1969

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